大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和44年(オ)276号 判決

上告人

土谷民

代理人

人見利夫

加藤公敏

被上告人

株式会社広島血液銀行

右代表者

土谷太郎

代理人

秦野楠雄

主文

原判決を破棄する。

被上告会社の控訴を棄却する。

訴訟の総費用は被上告会社の負担とする。

理由

上告代理人人見利夫、同加藤公敏の上告理由第一点について。

原審の認定するところによれば、被上告会社は親類縁者一〇名をもつて昭和二七年三月設立されたいわゆる同族会社であるが、代表取締役土谷剛治が昭和三四年三月三日死亡したので、取締役であつた土谷太郎(当時の取締役は以上二名の外、河合浩がいた。)が急遽その後任人事を決定するため、同月一五日、電話又は口頭をもつて株主ら(ただし河石鶴子を除く)に通知して臨時総会を招集し、その結果沢英堅(六〇〇株)、西亀耕二(三〇〇株)、河石九二夫(三〇〇株)、土谷太郎(六〇株)、土谷民(六〇株)の各株主のほか、剛治(九〇〇株)(以上かつこ内は各人の持株数)の相続人の資格において、民(上告人)、太郎、崇、章子(ただし相続人のうち二郎は欠席)が出席し、その総会において、取締役として土谷太郎、沢英堅、土谷民、監査役として西亀耕二をそれぞれ選任する旨の決議がなされたというのである。そして右原審の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして、首肯することができる。

ところで、株主総会の招集は、原則として、代表取締役が取締役会の決議に基づいて行なわなければならないものであるところ、前記総会が被上告会社の代表取締役以外の取締役である土谷太郎によつて招集されたものであることは前述のとおりであり、しかも、前記認定の事実によれば、右総会は取締役会の決議を経ることなしに同取締役の専断によつて招集されたものと推認される。してみれば、右総会は招集権限のない者により招集されたものであつて、法律上の意義における株主総会ということはできず、そこで決議がなされたとしても、株主総会の決議があつたものと解することはできない。したがつて、右決議の無効確認を求める上告人の本訴請求は理由があるというべきであり、論旨は理由がある。原判決は破棄を免れない。

よつて、上告理由中その余の点にいつての判断を省略し、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官松田二郎の意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

裁判官松田二郎の意見は次のとおりである。

私は本件の多数意見の結論に賛成であるが、これに関しては、当裁判所昭和四一年(オ)第八二号、同四五年七月九日第一小法廷判決における私の反対意見を引用する。(大隅健一郎 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例